オオカマキリは、その名の通り日本で一番大きなカマキリの仲間である。
写真のように草地や林縁の植物に紛れて、獲物が通るのを待ち構えていることが多い。オオカマキリの鎌状の前脚は、様々な昆虫を餌食にする。
オオカマキリの基本データ
学名:Tenodera sinensis
漢字名:大蟷螂・大螳螂
大きさ:68~95mm
成虫の見られる時期:8~11月
分布:北海道・本州・四国・九州
オオカマキリの頭部をアップで撮影した。黒い瞳で、こちらを睨んでいるかのように見える。
この視線から逃れようとしても、決して逃れることはできない。どの方向から見ても黒い瞳の視線が追いかけてくるはずだ。
この黒い瞳は、私たちの瞳(瞳孔)と同じように見えるが、仕組みが違うまったくの別物で、偽瞳孔と呼ばれる。
常にこちらに視線があるように見える仕組みはこうだ。
黒い粘土の球に、隙間なくストローを放射状に刺していく。球の表面全てにストローを刺すと、ストローと自分の視線が真っ直ぐにならないと、底の黒い粘土を見ることはできない。こちらが見る角度を変えれば、それに合わせて底が見えるストローも変わるハズだ。
カマキリの複眼は細長い筒状の個眼の集まりで、これがストローだ。個眼の底は光を反射しないので黒く見える。これが黒い粘土である。個眼と自分の視線が真っ直ぐにならないと黒い底を見ることはできない。底が見えている部分だけが、あたかも瞳のように見えているのだ。
偽瞳孔はカマキリだけでなく、チョウやトンボ・バッタ等でも見ることができる。
雌のオオカマキリ。翅からはみ出るほどお腹が膨らんできている。
オオカマキリの雄。雌に比べるとグッとシャープに見える。
雌のお尻。飛び出しているのが卵を産むための管、産卵管だ。
雄のお尻には産卵管がない。
カマキリは交尾が終わると、雌が雄を食べてしまうという話を聞いたことがあるかもしれない。実際、全ての雌が必ず雄を食べるというわけではないが、自然観察をしているとこんなシーンにも出くわす。
この2頭が、食う食われるの関係となる前にカップルだったのかはわからない。
雄が命懸けで交尾をした後には、雌が泡を出しながらその中に卵を産む。泡が空気を抱き込んで固まることで、卵を寒さと乾燥から守ってくれるのだ。
この一つの卵鞘の中には、100~200ほどの命が宿っている。
上の写真の個体は、これまでのオオカマキリ達と少し違っていることにお気づきだろうか。
腹(の背中側)を見ると、翅に覆われていない。この個体は、まだ成虫になっていないオオカマキリの幼虫なのだ。
多くの昆虫にとって翅が生えるということは、空を飛び回れるだけでなく、大人になった証でもある。
この角度から撮影したのは、いかにもカマキリらしい悪そうな睨みのシーンが撮りたかったわけではない。
オオカマキリには、よく似ているチョウセンカマキリという仲間がいるが、前脚の付け根を見れば見分けることが可能だ。
黄色ければオオカマキリ、オレンジ~赤ならチョウセンカマキリである。
こちらもオオカマキリの雄。一部オレンジっぽい部分があるが、チョウセンカマキリはもっと広範囲にオレンジがでる。
オオカマキリとチョウセンカマキリを見分けるもう一つのポイントは、後翅の色。上の写真のように色~紫褐色をした部分が多くあればオオカマキリだ。チョウセンカマキリは、褐色部分がすじのように少しあるだけだ。
チョウセンカマキリと見分けるために身体検査をしていると、鎌で挟まれて痛い思いをすることがあるが、そこは我慢するしかない。