ジャコウアゲハは、ひらひらと優雅に舞う姿が印象的なアゲハチョウの仲間だ。
写真の個体は、翅が褐色なので雌。ハルジオンの蜜を優雅に吸う姿は、まるで貴婦人のようである。
しかし、山姥という妖怪を表す「山女郎」という別名がある。はたして、どういった理由で、そう呼ばれるようになったのだろうか。
ジャコウアゲハの基本データ
学名:Byasa alcinous
漢字名:麝香揚羽・麝香鳳蝶
別名:山女郎
大きさ(開帳):75~100mm
成虫の見られる時期:4~9月
分布:本州・四国・九州・沖縄
食べ物:幼虫―ウマノスズクサ、オオバウマノスズクサ
成虫―花の蜜
冬越し:蛹で越冬
こちらもジャコウアゲハの雌。
こちらの個体は黒色が強いので雄だ。
雄も雌も、腹の横に赤い帯がある。
この赤と黒の配色には、ちゃんと意味がある。
ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサやオオバウマノスズクサの葉を食べるが、これらにはアリストロキア酸という毒が含まれている。ジャコウアゲハの幼虫は、この毒を体内にため込むことができるのだ。この毒は、成虫になっても体内に蓄積されている。
毒をためこんだジャコウアゲハを食べて中毒をおこした捕食者は、今後この赤と黒のチョウを食べることはないだろう。
赤と黒の配色は、捕食者に対する警告の意味があったのだ。
ジャコウアゲハが他のアゲハよりもゆったりと飛ぶのも、この毒があるためかもしれない。
ジャコウアゲハを捕まえたら、お腹の先を嗅いでみよう。
ジャコウアゲハの雄の交尾器。ここから名前の由来である麝香(じゃこう)の香りがする…というのだが、ワタシにはあまり感じられなかった。
「におい」といえば、アゲハの仲間は幼虫時代に臭角(肉角)を出して外敵を追い払うが、ジャコウアゲハの幼虫も臭角を備えている。
これは、ハンミョウの会のメンバーが秋に見つけた、ジャコウアゲハの蛹である。
「一枚…二枚…」と皿を数える怪談話で有名なお菊さん。
このお菊さんが後ろ手に縛られている姿に似ているというのが、写真のジャコウアゲハの蛹である。通称「お菊虫」。
なんとも不気味で不謹慎な名前の様な気もするが、中からは美しい姿の蝶が現れるので、お菊さんも悪い気はしないだろうか。
観察をつづけ、翌年の2月に撮影したのだが、左わき腹?の辺りが黒くなっているのがおわかりだろうか。
反対側は変色しておらず、どうやら何者かに寄生されてしまったかもしれない。
こちらは上と同じ蛹のお尻側をアップにしたもの。穴が開いているのだが、腹の変色と何か関係があるのだろうか。
また、枝と接している右側に、城に黒丸の物体がついている。これは、蛹の表面に不規則に10数個ついていたのだが、正体は不明である。
この「黒丸」について何かご存じの方は、ぜひコメント欄で教えていただきたい。
上と同じ寄生されたジャコウアゲハの蛹の3月の状態。褐色味を帯びてきた。
4月。寄生していた何者かは、出て行ってしまったようだ。ジャコウアゲハの蛹の中はすっからかんになっていた。
こうして無事に成虫になるには、様々な困難があるのだろう。
ジャコウアゲハの蛹のぬりえはコチラから。