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ジャコウアゲハ
ジャコウアゲハ
2019年5月神奈川県横浜市

ジャコウアゲハは、ひらひらと優雅に舞う姿が印象的なアゲハチョウの仲間だ。

写真の個体は、翅が褐色なので雌。ハルジオンの蜜を優雅に吸う姿は、まるで貴婦人のようである。

しかし、山姥という妖怪を表す「山女郎」という別名がある。はたして、どういった理由で、そう呼ばれるようになったのだろうか。

ジャコウアゲハの基本データ

分類:動物界 節足動物門 昆虫綱 鱗翅目(チョウ目)アゲハチョウ上科 アゲハチョウ科 アゲハチョウ亜科 キシタアゲハ族 ジャコウアゲハ属 ジャコウアゲハ
学名:Byasa alcinous
漢字名:麝香揚羽・麝香鳳蝶
別名:山女郎
大きさ(開帳):75~100mm
成虫の見られる時期:4~9月
分布:本州・四国・九州・沖縄
食べ物:幼虫―ウマノスズクサ、オオバウマノスズクサ
成虫―花の蜜
冬越し:蛹で越冬
ジャコウアゲハ
2018年8月神奈川県横浜市

こちらもジャコウアゲハの雌。

ジャコウアゲハのオス
2023年7月神奈川県厚木市

こちらの個体は黒色が強いので雄だ。

ジャコウアゲハ
2023年9月神奈川県横浜市

雄も雌も、腹の横に赤い帯がある。

ジャコウアゲハの腹部
2023年9月神奈川県横浜市

この赤と黒の配色には、ちゃんと意味がある。

ジャコウアゲハの幼虫
2017年6月神奈川県横浜市

ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサやオオバウマノスズクサの葉を食べるが、これらにはアリストロキア酸という毒が含まれている。ジャコウアゲハの幼虫は、この毒を体内にため込むことができるのだ。この毒は、成虫になっても体内に蓄積されている。

ジャコウアゲハ
2023年9月神奈川県横浜市

毒をためこんだジャコウアゲハを食べて中毒をおこした捕食者は、今後この赤と黒のチョウを食べることはないだろう。

赤と黒の配色は、捕食者に対する警告の意味があったのだ。

メスのジャコウアゲハ
2019年8月神奈川県横浜市

ジャコウアゲハが他のアゲハよりもゆったりと飛ぶのも、この毒があるためかもしれない。

ジャコウアゲハのオス
2017年5月神奈川県三浦郡

ジャコウアゲハを捕まえたら、お腹の先を嗅いでみよう。

ジャコウアゲハの交尾器
2017年5月神奈川県三浦郡

ジャコウアゲハの雄の交尾器。ここから名前の由来である麝香(じゃこう)の香りがする…というのだが、ワタシにはあまり感じられなかった。

臭角を出したジャコウアゲハの幼虫
2022年6月神奈川県横浜市

「におい」といえば、アゲハの仲間は幼虫時代に臭角(肉角)を出して外敵を追い払うが、ジャコウアゲハの幼虫も臭角を備えている。

ジャコウアゲハの蛹
2023年1月神奈川県横浜市

これは、ハンミョウの会のメンバーが秋に見つけた、ジャコウアゲハの蛹である。

「一枚…二枚…」と皿を数える怪談話で有名なお菊さん。

このお菊さんが後ろ手に縛られている姿に似ているというのが、写真のジャコウアゲハの蛹である。通称「お菊虫」。

なんとも不気味で不謹慎な名前の様な気もするが、中からは美しい姿の蝶が現れるので、お菊さんも悪い気はしないだろうか。

寄生されたジャコウアゲハの蛹
2023年2月神奈川県横浜市

観察をつづけ、翌年の2月に撮影したのだが、左わき腹?の辺りが黒くなっているのがおわかりだろうか。

反対側は変色しておらず、どうやら何者かに寄生されてしまったかもしれない。

寄生されたジャコウアゲハの蛹
2023年2月神奈川県横浜市

こちらは上と同じ蛹のお尻側をアップにしたもの。穴が開いているのだが、腹の変色と何か関係があるのだろうか。

また、枝と接している右側に、城に黒丸の物体がついている。これは、蛹の表面に不規則に10数個ついていたのだが、正体は不明である。

この「黒丸」について何かご存じの方は、ぜひコメント欄で教えていただきたい。

寄生されたジョコウアゲハの蛹
2023年3月神奈川県横浜市

上と同じ寄生されたジャコウアゲハの蛹の3月の状態。褐色味を帯びてきた。

寄生されたジャコウアゲハの蛹の抜け殻
2023年4月神奈川県横浜市

4月。寄生していた何者かは、出て行ってしまったようだ。ジャコウアゲハの蛹の中はすっからかんになっていた。

メスのジャコウアゲハ
2019年5月神奈川県横浜市

こうして無事に成虫になるには、様々な困難があるのだろう。

ジャコウアゲハの蛹のぬりえはコチラから。

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