日本に自生するスミレの仲間は、60種以上もあるという。違いがわずかなものも多く、見分けるのは難しい。
上の写真は3月初旬に撮影したが、ちょっと早めに咲いたタチツボスミレだろうと思っていた。
しかし、よく調べてみるとアオイスミレであることがわかった。
アオイスミレの基本データ
学名:Viola hondoensis
漢字名:葵菫
花の見られる時期:3~4月
分布:北海道・本州・四国・九州
柱頭(めしべの先)がカギ状に曲がっていることや葉や花柄に毛があること、若い葉の端が包まることなどが、アオイスミレの特徴ということらしい。
少し見にくいが、柱頭が下に折れ曲がっているのがわかる。花柄の毛も確認できる。
上の2枚の花弁がウサギの耳のように立っている。両サイドの2枚はあまり開かない。
アオイスミレの距(花の後ろのクルッと巻き上がった部分)。ここに蜜を溜め込んである。
葉は丸っこいハート型(心形)で、両面に毛がある。右に写っている葉の両端がクルッとしているのがわかるだろうか。
スミレの仲間はほとんどが春に咲くことも、スミレの見分けを難しくしている一つの要因だと思う。アオイスミレは、他のスミレよりもひと足早く咲くことも、見分けのポイントになりそうだ。
また、アオイスミレはニオイスミレの近縁で花が香るようだが、ワタシには感じられなかった。
さて、スミレの仲間の果実は朔果と呼ばれるタイプで、乾燥して種を遠くへ弾き飛ばすという特徴がある。
飛ばした種には「エライオソーム」というおまけがついていて、これはアリのご馳走となる。その為、アリは種を巣に運び込むワケだ。
ご馳走を頂いていらなくなった種は、巣の近くに捨てられる。こうして、スミレの種はひろく撒かれることになるのだ。
しかし、アオイスミレの果実は少し形が違って、種を弾き飛ばすことができない。
その代わりに、他のスミレよりもエライオソームが大きくなっている。アリだけに種を撒いてもらう分、多めのご馳走を用意したのだろう。
このように、見た目は身近なタチツボスミレによく似ているアオイスミレだが、一風変わった特徴を持っているようだ。